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II.硫化鉱物および砒化鉱物(1)

9. 鶏冠石
Realgar AsS
産地 群馬県西牧鉱山
西牧鉱山鶏冠石は,樹脂光沢を有する鮮紅色,2〜3mmの短柱状結晶の集合であり,石英を伴う.表面は一部燈色の粉末に変化している.

10. 石黄
Orpiment As
2S3
産地 北海道定山渓
定山渓石黄は黄色,7〜8mmの短柱状結晶の集合体である.(010)に完全な劈開があり,劈開面は真珠光沢を有し,やや彎曲している.

11. 輝安鉱
Stibnite Sb
2S3
産地 兵庫県中瀬鉱山/愛媛県市の川鉱山/宮崎県大内鉱山
市の川鉱山輝安鉱の結晶は鉛灰色,金属光沢を呈し,ほとんどすべて長柱状で,柱面に縦の条線がある.長さ数10cmの美晶であり,面の種類に富むが,全体としての形は比較的単純である.柱面としては,m (110),b (010),h (310)面が発達し,端面には,〔101〕晶帯に属するp (111),τ (343),v (121)面が認められる.市の川の美結晶は国の内外に著名で,多くの研究者により測角されている.総合的な研究としてはNEFF(1923)の報告がある.
中瀬鉱山産は1〜2cmの柱状結晶の集合体である.mb およびp 面を主とし,s (113)面を伴うものもある.形態について木村(1937)の報告がある.ときに石英脈中に径数mm,長さ1cm程度の柱状の単晶,あるいは集合体として含まれる.

12. 輝蒼鉛鉱
Bismuthinite Bi
2S3
産地 山口県佐々波鉱山/朝鮮九川里密陽/産地不明
佐々波鉱山産輝蒼鉛鉱は,石英脈中に2〜3mmの,金属光沢を有する銀灰色結晶の集合体として含まれる.
ときに緑簾石,ざくろ石等を伴う5mm程度の葉片状結晶で,金属光沢を有するものが認められる.

13. 輝水鉛鉱
Molybdenite MoS
2
産地 岐阜県苗木/岐阜県白川村/富山県下黒部鉱山/福岡県吉原鉱山/福岡県赤池町/福岡県宝台鉱山
輝水鉛鉱の標本は10数個あり,(1)ペグマタイト質石英脈中のもの,(2)スカルンに伴うもの,(3)花崗岩中に含まれるもの,に分けられる.
(1)の型に属する白川村は,金属光沢のある鉛灰色で,脂感があり,石英脈中に葉片状の集合体として含まれる.大きなものは15cmに達する.苗木産は鱗片状をなし,鉄マンガン重石を伴う.下黒部鉱山産は石英脈中に黄鉄鉱と共出している.
(2)に属するものには吉原鉱山産および宝台鉱山産があり,また灰鉄輝石を伴うものもある.いずれも3〜5mmの鱗片状結晶の集合体をなす.
(3)の型である赤池町産は,アプライト質花崗岩中に1〜2mmの鱗片状結晶が含まれる.

14. 輝銀鉱
Argentite Ag
2S
産地 静岡県土肥鉱山/新潟県佐渡鉱山
土肥鉱山輝銀鉱は石英脈中の晶洞に見出され,径5mm程度の,d (110)面を主とする扁平な結晶で,暗鉛灰色,金属光沢を示す.

15. 方鉛鉱
Galena PbS
産地 秋田県太良鉱山/秋田県尾去沢鉱山/秋田県阿仁鉱山/栃木県足尾鉱山/新潟県葡萄鉱山/石川県倉谷鉱山/岐阜県神岡鉱山
方鉛鉱の標本は20個以上を数えるが,晶相はほとんどすべてがa (100)面とo (111)面からなる.
倉谷鉱山産はa (100)面の単形で,面は腐食のため階段状に凹入し,にぶい鉛色の金属光沢を示す.径は5mm以下で,黄銅鉱と共出する.
葡萄鉱山産はa 面からなる立方体の晶相を有し,くすんだ鉛黒色の面の中央は階段状に凹んでいる.
尾去沢鉱山産は閃亜鉛鉱を伴い,a 面を主とし,小さなo 面を伴う.径は1cm以下で灰黒色,無光沢である.
神岡鉱山産はa 面を主とする径1cm前後の結晶の集合体であり,ときに小さなo 面を伴う.a 面からなる結晶が.(111)を双晶面とする貫入双晶をなすこともある.
阿仁鉱山a 面にo 面が伴い,径は2〜6mmである.ときに大部分が径1cm以下で,a 面とo の小面からなるが,o 面上に時々階段状に凹みを有するものがある.
足尾鉱山産は閃亜鉛鉱と共出し,a面と良く発達したo 面を持つ,径5〜10mmの結晶が集合しており,黄銅鉱を伴うao 面よりなる灰黒色,無光沢の2〜3cmに達する美晶が群生する大標本を含む.
太良鉱山産はa およびo 面がほとんど同等に発達し,径5〜6cmに達する結晶である.鉛灰色の結晶表面は金属光沢を有するが,ときに腐蝕して不平滑となっており,多数の円形の凹みが存在する.腐蝕のため,累帯構造が認められる場合がある.

16. 閃亜鉛鉱
Sphalerite ZnS
産地 秋田県阿仁鉱山/宮城県細倉鉱山/新潟県白板鉱山/栃木県足尾鉱山/岐阜県神岡鉱山/島根県笹ヶ谷鉱山
閃亜鉛鉱の標本は20個に達する,晶相はo (111)を主面とするが,8面体型と4面体型とがある.
阿仁鉱山は8面体型で,a (100)の小面を伴う.径1〜2cm,黒褐色半透明の美しい結晶の集合体である.ときにd (110)またはm (311)を伴い,o面には3角形の成長丘が認められることがある.または径3〜5mmの8面体の小結晶にまじって,1cm程度の大きな4面体結晶が散在する.いずれもa の小面を伴う.
白板鉱山産はd のよく発達した8面体型で,径1〜2cmである.褐色不透明で,黄銅鉱と共出する.
足尾鉱山産は褐色半透明で,径は1〜2cmでありao 面を主とし,d 面を伴う8面体型である.ときにao 面の発達した,径5〜8mmの黒色不透明結晶で,石英とともに群生している.または黒色不透明,径2mm程度の板状結晶の集合体であり,(111)を双晶面としたくり返し双晶であるため,6角板状を呈している.これについては小川(1935)の研究がある.
神岡鉱山産は,石英,方解石を伴う,黒褐色,不透明,径1〜1.5cmの4面体型結晶で,o' (1-11)の微小面を有する.o 面上に,m およびa 面のくり返しによる微斜面が形成されている.

17. 辰砂
Cinnabar HgS
産地 奈良県大和鉱山/奈良県小松鉱山/徳島県水井鉱山/大分県千怒鉱山/熊本県五木村/台湾金瓜石/支那
大和岳山産辰砂は,片麻岩中に幅約2cmの血紅色の帯状をなして含まれるが,晶洞中には美しい微細結晶が認められる.ときに2〜3cmの方解石脈の淡緑色外縁部に,鮮紅色の細い脈状をなしている.
水井鉱山は方解石脈中に微粒状をなして点在する.
支那産は砂鉱であって,m (10-10)面を持つ,径3〜5mmの赤褐色不透明結晶である.

18. 銅藍
Covelline CuS
産地 秋田県小坂鉱山/秋田県尾去沢鉱山
銅藍の標本は4個あり,すべて珪質鉱石中の割れ目に群生している.美しい藍色で,光沢が強い.
小坂鉱山は径2〜4mmの6角鱗片状をなす.片山(1933a)の報告がある.
尾去沢鉱山産は,鱗片状の微細結晶にまじって径8mm,厚さ1mmの6角板状結晶を認める.c (0001),z (20-21)面のほかに,c p (10-11)面が交互にくり返して生ずるゆるやかな錐面を伴っている.堀(1940)の報告がある.

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