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VII.珪酸塩鉱物(5)

109. 異極鉱
Hemimorphite Zn
4(OH)2Si2O7・H2O
産地 富山県亀ヶ谷鉱山/岐阜県神岡鉱山/大分県木浦鉱山
亀ケ谷鉱山産異極鉱は,白色不透明,微粉状であって,1mm以下の薄層が累積し,焼石膏片を思わせる外観を呈している.
神岡鉱山産は,絹糸光沢を有する繊維状集合の薄層(1mm以下)が厚さ3〜5mm程度に重なり,酸化鉱石の表面を被覆している.各薄層は白色あるいは淡青色であって,縞状をなすが,とくに表層部は鮮青色を呈する.
木浦鉱山は,赤褐色の酸化鉱石の孔隙中に,厚さ0.5mm以下の透明な板状結晶が放射状あるいは束状集合をなしている.結晶はb (010),m (110)を主面とし,端面にはc (001),i (031),e (011),s (101),t (301)面が認められる.b m e s t 面から成るものが最も多く,b m i s t 面から成るものがこれに次ぐ.ときに細礫状結晶質石灰岩または礫状褐鉄鉱を被覆あるいは交代して,b 面の発達した厚さ0.5mm程度の板状結晶が密生している.結晶は無色透明であって,b m s t c の諸面が認められ,稀にa (100)面の認められるものもある.

110. 電気石
Tourmaline



(a) 鉄電気石
Schorl NaFe
3B3Al3(Al3Si6O27)(OH, F)4
産地 福島県石川山/福島県塩沢/山梨県金峰山/長野県御所平/山口県薬王寺鉱山/福岡県福吉/大分県尾平鉱山


(b) リシア電気石
Lithia tourmaline Na(Al, Fe, Li, Mg)
3B3Al3(Al3Si6O27)(OH, F)4
産地 福岡県長垂

電気石には,鉄電気石schorl,マグネシウム電気石dravite,およびアルカリ電気石elbaiteを端成分とする固溶体系列が存在するが,ここでは高標本の従来の分類に従い,鉄電気石とリシア電気石に分けて記載する.


(a) 鉄電気石
鉄電気石は黒色を呈し,一般に黒電気石と称される.標本数は15個に及び,晶相は次の3つの型に分けられる.
(1) 長柱状結晶
石川山はペグマタイト中の典型的な柱状結晶で,径5cm,長さ15cmに達する.柱面はa (11-20)およびm (10-10)面が発達するが,深い条線を持つため,その断面は丸みをおびた9角形をなす.錐面ではr (10-11)およびe (01-12)面がよく発達し,o (02-21)面の発達は弱い.面の組み合わせとしてはr 面のみ,r e 面,r o 面の3種がある.金峰山産,塩沢産,福吉産も石川山産と同様の産状,晶相で,径,長さがそれぞれ2.5,3.5cm;1.5,4cm;3,20cmの大きさである.
(2) 短柱状結晶
御所平産は,錐面rの大きな発達に比べ,柱面 m a が短く,短柱状ないし板状である.径5cm,長さ3cmである.
(3) 針状結晶
尾平鉱山産および薬王寺鉱山産はいずれも接触交代鉱床から産した針状結晶である.このうち尾平鉱山産は放射状集合をなし,長さ2.5cmに達する.

(b) リシア電気石
リシア電気石は青色,紅色等を呈し,それぞれ藍電気石indigolite,紅電気石rubelliteと称される.
長垂は藍電気石で,濃青色の細い柱状結晶が放射状集合をなし,結晶の長さ3cmに達する.同産紅電気石で,リシア雲母を伴っているものもある.結晶は細い柱状で,放射状集合をなし,結晶は彎曲している.同産は径1.5cm,長さ3cmの柱状結晶であり,中央部は紅色,周辺部は緑色の累帯構造をなしている.

111. 魚眼石
Apophyllite KFCa
4(Si8O20)・8H2O
産地 新潟県間瀬/東京都父島/岐阜県神岡鉱山
間瀬産魚眼石は玄武岩の空洞中に方沸石を密接に伴って群生しており,標本は15個の多くを数える.結晶はほとんどすべてが淡青色半透明で,径3〜10mmの大きさであり,c (001),a (100),p (111)面が認められる.このうち,a p 面は強いガラス光沢を有するが,c 面は光沢を欠く.形態は,p 面が大きく発達してa の小面を伴う錐状型が多い.とくにa c 面の発達が劣り,錐状を呈するものも認められる.また数としては少ないが,柱状をなすものもあり,これらにおいてはa c 面が良く発達している.
神岡鉱山産無色透明の典型的な錐状結晶で,p 面に比べてa c 面が小さく,結晶によってはc 面を欠く場合もある.長さ4〜8mmの結晶が群生している.
父島は,変質した安山岩空洞中に輝沸石を伴って産する柱状結晶で,a c 面とくにa 面が大きく発達し,p 面は非常に小さい.結晶は白色不透明で,径8mm,長さ15mmであり,a 面には縦の条線が認められる.

112. モルデン沸石
Mordenite Na(AlSi
5O12)・3H2O
産地 岩手県荒沢
荒沢モルデン沸石は,流紋岩の空隙に微細な白色繊維状をなして含まれている.

113. 輝沸石
Heulandite Ca(Al
2Si7O18)・6H2O
産地 東京都小笠原(父島)/ブラジル
父島輝沸石は,変質した安山岩空洞中の無色ないし淡緑色半透明結晶で,b (010),c (001),m (110),t (201),s (-201)の諸面が認められる.このうちb 面がとくに大きく発達して板状をなしており,一部の結晶ではm 面を欠き6角板状を呈する.結晶は径4mm,厚さ1.5mm程度で,{010}の劈開が著しい.
ブラジル産は束沸石を伴い,安山岩空隙中の径4mm以下の無色透明結晶である.父島産と同様にb c m t s 面から成るが,b c 面が細く,m 面を欠くこともある.

114. 束沸石
Stilbite Ca(Al
2Si7O18)・7H2O
産地 新潟県間瀬(?)/静岡県沢田/ブラジル
間瀬産(?)束沸石は,玄武岩の空洞中に魚眼石,濁沸石とともに板状結晶として見出される.厚さ1mm,径3mm程度の無色半透明小結晶である.c (001)を接合面とする双晶で,c 面が大きく発達し,m (110),b (010)面を伴っている.
沢田は凝灰岩の表面をおおう微細結晶で,方解石を伴う.
ブラジル産は,安山岩の空洞に輝沸石と共出するもので,c (001)を接合面として,平行連晶をなし,特有の束状集合体を形成している.長さ2cmに達する.

115. 濁沸石
Laumontite Ca(Al
2Si4O12)・4H2O
産地 新潟県間瀬(?)

テキストのみ

間瀬産(?)濁沸石は,玄武岩の空洞中に魚眼石,束沸石を伴う白色柱状結晶の集合体である.径1mm,長さ6mmの大きさで,m (110)面が認められる.

116. 菱沸石
Chabazite Ca(Al
2Si4O12)・6H2O
産地 宮城県三龍/静岡県伊豆(下阿津)/岐阜県苗木/福岡県今山
伊豆産および今山菱沸石は,それぞれ安山岩質凝灰岩,玄武岩の空隙に径2〜3mmの小結晶として含まれる.結晶は無色透明で,r (10-11)面から成る菱面体をなし,特有の貫入双晶が認められる.
苗木産は長石結晶の表面に付着する径2〜3mmの菱面体結晶で,黄褐色,半透明である.
三龍産は,変質安山岩の空洞に径4mm程度の無色半透明結晶として含まれ,phacoliteと呼ばれる形態を示す.すなわち,(0001)を双晶面とする接合双晶であって,t (11-23),s (01-12)面が認められ,粒状を呈する.

117. 方沸石
Analcite Na(AlSi
2O6)・H2O
産地 静岡県間瀬
間瀬方沸石は,玄武岩空洞中に魚眼石と密接に伴うもので,標本数は15個に及ぶ.ほとんどすべてが無色透明ないし半透明で,n (211)面からなる典型的な偏菱24面体型結晶であり,稀にa (100)の小面を伴うものもある.大きさは径4〜15mmで,標本によっては針状のソーダ沸石,方解石等も伴っている.

118. ソーダ沸石
Natrolite Na
2(Al2Si3O10)・2H2O
産地 新潟県間瀬/長野県西塩田
間瀬ソーダ沸石は,他の沸石類と共に玄武岩空洞中に生成している.結晶は無色透明で針状をなし,長さは15mmに達する.産状としては,トムソン沸石,魚眼石および方沸石の表面をおおっている場合と,母岩の玄武岩空洞壁から直接成長している場合があるが,いずれも放射状配列をなし,末端部に方解石が付着することが多い.
西塩田産は白色長柱状結晶の放射状集合体で,長さ8cmに達する.径1mm程度の小結晶は無色透明で,m (110)面が認められる.

119. トムソン沸石
Thomsonite NaCa
2(Al5Si5O20)・6H2O
産地 新潟県間瀬

テキストのみ

間瀬産トムソン沸石は,玄武岩の空洞に白色の繊維状結晶が密な放射状集合をなし,球穎を形成している.球穎の径は2cmに達し,表面は針状のソーダ沸石におおわれる場合が多い.

120. 白雲母
Muscovite KAl
2(AlSi3)O10(OH)2
産地 滋賀県田の上町/愛媛県土居村/福岡県長垂
田の上山産および土居村産白雲母はいずれも板状結晶で,底面は強い真珠光沢を持つ.このうち田の上山産は水晶を伴っており,径2cmの6角形をなす.
長垂は細長い葉片状結晶の羽毛状集合体である.

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