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放散虫〜この美しき生き物たち
 原生動物とは、動物のうち単細胞のものを指します。放散虫とは、海で浮遊しながら生活するプランクトンで、原生動物の仲間です。わたしたち古環境学研究室ではこの放散虫を調べて海の環境変化をしらべています。放散虫のからはガラスでできています。それらは非常に小さいけれど、とてもきれいでいろいろな形をしています。まずはその形の美しさをお見せします。

Astrosphaera hexagonlis Haeckel

Hexacontium hostile Cleve

Cladococcus viminalis Haeckel

Saturnalis circularis Haeckel

Didymocyrtis tetrathalamus
tetrathalamus
(Haeckel)

Larcospira quadrangula Haeckel


Hexapyle sp.

Cladoscenium ancoratum Haeckel

Lophopaena cf. capito Ehrenberg

Calimitra annae Haeckel

Lophospyris pentagona pentagona
(Ehrenberg), emend. Goll

Corocalyptra cervus (Ehrenberg)


Pterocanium praetextum
(Ehrenberg) eucolpum Haeckel

Dictyophimus crisiae
Ehrenberg

Stichopilium bicorne Haeckel


Lithostrobus hexagonalis
Haeckel

Theocalyptra bicornis (Popofsky)

 海の地層から見つかる化石をよく調べると、その生き物が生きていたのがいつなのか、死んで化石になったときにそこがあたたかかったのか寒かったのか、などが分かります。つまり、その場所がいつごろ、どんな環境だったのかを知ることができるのです。一番古い放散虫の化石は約5億年前のカンブリア紀の地層から発見されています。つまり、恐竜のいた時代 (2億1000万年前から約6500万年前) よりもずっと昔から地球上に生き続けている生き物なのです。

小さいけれど大きなちから
 放散虫は海にすんでいます。 あたたかいところからさむいところまで広く分布し、 さまざまな深さでの海の環境に適応しています。そこで、海の中層の環境変化を記録しているのではないかと期待されています。
みなさんはマリンスノーを知っていますか? 海では表層から海底にむけて雪のようなものが降り積もっています。この雪の正体は主にプランクトンなど生物のしがいで、マリンスノーと呼びます。マリンスノーの降り積もる量は海の表層での生物生産を表しています。それは季節によって変動し、その変動から海の環境の変化を知ることができます。プランクトンはマリンスノーという形で大気中の二酸化炭素を深海に運びます。放散虫もその一つとして昔から今まで地球の気候変動に大きな役割を果たしてきたのです。
 観測方法とCO2が海に吸収されるしくみ

 いろいろな深さのプランクトンを
 つかまえるプランクトンネット
  マリンスノー
セディメントトラップ
顕微鏡でみたマリンスノー
 マリンスノーを定期的にとらえる
 セディメントトラップ下部
顕微鏡でみた堆積物コア
海底から採取された堆積物コア
堆積物コア
 わたしたちは世界中の放散虫やその化石を調べて、地球が昔どのようなところだったのかを調べています。そして、これから先の未来に、地球の姿がどういうふうに変わっていくのかを明らかにしようとしています。この目に見えないほど小さいけれど、 恐竜以上に魅力をもった放散虫についてみなさんも将来研究してみませんか?
 作成:高橋孝三 理学研究院 地球惑星科学部門
      池上隆仁 理学府   地球惑星科学専攻

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