3-02
クマゼミは増えた?
 毎年夏になると、たくさんのクマゼミが鳴いています。しかし、昔はもっと少なかったといわれています。




 ほんとうに、クマゼミの増加は、気温の上昇に関係しているのでしょうか?最近、分布が広がっているように報道されていますが、じつは、1989年頃とあまり変わっていません。
 温暖化によって分布が広がるかどうかをシミュレーションしてみましょう。すると、関東地方はすべてクマゼミが生息できると予測してしまい、現在の分布と一致しません。

 最近の研究結果では、クマゼミの幼虫が好む樹が関東南部にまでしか生えていないことが原因で、クマゼミの分布が制限されているのではないかと考えられています。

松尾芭蕉が詠んだ俳句のセミは何?
セミが鳴きはじめる時期は、その年の気温に関係していると考えられています。
 
 
 松尾芭蕉の「閑かさや岩にしみいる蝉の声」という俳句があります。この俳句で詠まれているセミとは、どんなセミなのでしょうか?
 この俳句は、元禄2年5月27日(新暦1689年7月13日)に、山形市山寺の立石寺で詠まれました。この時代は、現在よりもかなり寒いことが知られています。そこで、3種のセミの初鳴き日と6月の平均気温の相関関係を使って、当時の初鳴き日を推測してみました。
アブラゼミ・ニイニイゼミ・ヒグラシの初鳴き日の推測図. 気象庁メッシュ気候値2000をもとに1900年のメッシュ気候値を推定し、さらに全メッシュの6月平均気温を−1.5℃寒冷化した。3種のセミの初見日は、気象庁の生物季節観測情報をもとに6月平均気温との相関に基づいて推測した。この推測図はセミ類の分布を示すものではない。図中のは、山形市山寺の位置を示す。

 その結果、松尾芭蕉が山寺を訪れた7月13日に鳴いていたセミは、ニイニイゼミだと考えられます。

作成:作成: 紙谷 聡志 農学研究院・動物昆虫学講座・昆虫学研究室

フレームが表示されていない場合はこちら