金に関連する展示物の紹介

世界最大の金塊(模型)

 1858年にオーストラリアで掘り出された自然の金塊の模型です。実物は69キログラムの重さがありましたが、現在は残っていません。その後に産出した金塊とともに、最大級とされています。

九州を代表する金鉱石

金鉱石(菱刈鉱山)

 石英と氷長石の微細な結晶でできた鉱石で、金は黒色の縞に集まっています。この標本は3.6パーセントの金を含んだ超高品位鉱で、これから慶長小判が10枚以上作れます。金は銀と合金をつくり、エレクトラムと呼ばれる鉱物として含まれています。(幅15cm)
55mレベル西6番 瑞泉1脈 西押し
品位:金 36,300 g/t
   銀 14,900 g/t
産地:鹿児島県伊佐郡菱刈町(1988年5月採取)

金鉱石(菱刈鉱山)

 縞状鉱石で、縞は石英、氷長石、粘土鉱物(スメクタイト)の割合の違いを示します。白い縞の一部にはトラスコッタイトという鉱物が見られます。暗色の縞にはエレクトラム、黄銅鉱、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、ナウマン鉱などでできています。左端の黒色泥岩は、鉱脈の壁で基盤の四万十累層群です。(幅40cm)
55m-2SL(62.5mレベル)西1番 芳泉1脈 東押し
産地:鹿児島県伊佐郡菱刈町 菱刈鉱山


金鉱石(菱刈鉱山)

 幅4メートルの鉱脈の中ほどにある高品位の縞状鉱石です。黒色の縞に金が多く含まれ、肉眼でも金色のエレクトラムの粒子が見えます。(幅12cm)
50mレベル西145番 友泉3脈 西押し
品位:金 500 g/t
産地:鹿児島県伊佐郡菱刈町 菱刈鉱山(2001年8月28日採取)


金銀鉱石(串木野鉱山)

(幅15cm)
産地:鹿児島県串木野市 串木野鉱山


金銀鉱石(串木野鉱山)

 串木野鉱山は350年の歴史を持つ金山で、金を54トン、銀を445トン産出しました。鉱石は石英と少量の氷長石、粘土鉱物(スメクタイト)で構成され、金は銀黒と呼ばれる黒色部に濃集しています。(幅15cm)
産地:鹿児島県串木野市 串木野鉱山


金鉱石(鯛生鉱山)

 鯛生鉱床は明治23(1894)年に発見され、昭和初期には日本一の金山でした。鉱石は、粗粒で半透明の白色石英結晶と緑灰色の粘土鉱物で構成されています。金はエレクトラムとして、閃亜鉛鉱、輝銀鉱、黄銅鉱など硫化物に富む黒色の部分に濃集しています。標本周囲の茶色は、後に付着した鉄分によるものです。(幅15cm)
産地:大分県日田郡上津江村 鯛生鉱山

少し変わり者の金鉱石


金鉱石(布計鉱山)

 布計鉱山は南九州の産金地帯の最北端にあります。この鉱石は、白色の石英と緑灰色の粘土鉱物および暗緑色の変質安山岩片からなります。金(エレクトラム)は粘土質の部分にあり、ヘッス鉱、閃亜鉛鉱と銀黒を作っています。(幅20cm)
品位:金 414 g/t  
   銀 215 g/t
産地:鹿児島県大口市 布計鉱山


金鉱石(春日鉱山)

 鹿児島県の枕崎市付近には、南薩型鉱床と呼ばれる含金珪化岩があります。安山岩が熱水によって変質して、微小な石英の集合体(珪化岩)になったものです。熱水で溶けて孔だらけです。孔隙の中には、黒色の硫砒銅鉱(Cu3AsS4)、淡緑色のスコロド石(FeAsO4・2H2O)、透明でキラキラ光る石英、褐色の針鉄鉱などの結晶が見えます。(幅14cm)
産地:鹿児島県枕崎市西鹿籠 春日鉱山

金鉱石の特徴となる鉱物

トラスコッタイト

(Ca7(Si12O29)(OH)4・H2O)
 白色で絹状光沢があります。熱水の沸騰帯で成長する特殊な鉱物で、高品位の金鉱石を伴います。串木野、伊豆半島の土肥の例が知られています。(幅45cm)
40mレベル西13番立入 芳泉5脈 西押し
産地:鹿児島県伊佐郡菱刈町 菱刈鉱山(1986年12月採取)


葉片状石英(菱刈鉱山)

 多数の板状の隙間がある石英です。熱水が沸騰すると、方解石が葉片状の結晶として成長し、その隙間に微細な石英が沈殿します。後に、方解石が溶けると、このような形の石英になります。沸騰帯の近くでは、高品位の金鉱石が生成します。(幅35cm)
-20mレベル東2番立入 芳泉1脈 東押し
産地:鹿児島県伊佐郡菱刈町 菱刈鉱山(2001年10月29日採取)


犬牙状方解石 (串木野鉱山)

 串木野鉱山の鉱脈には、石英、氷長石の外に大量の方解石が産します。鉱脈生成の末期に沈殿した粗粒の方解石には金は含まれていません。標本は、鉱脈中心部の空洞の壁に成長した犬牙状の方解石です。(幅12cm)
産地:鹿児島県串木野市 串木野鉱山

金鉱石の地表にできた温泉沈殿物

シンター

 シンターは、温泉や間欠泉の周辺で熱水中のケイ酸(シリカ)が沈殿してできます。よく観察すると、柱のように縦に伸びた構造が見られます。熱水環境で光合成バクテリアがコロニーをつくり、太陽の光へ向かって成長したことを示します。(幅30cm)
産地:大分県九重町生竜


シンター

 シリカの沈殿が層となっています。バクテリアの成長を示す柱状の構造がよく残っています。(幅10cm)
産地:大分県九重町生竜


シンター

 熱水が地表に湧き出して流れがあると、そこに成長するバクテリアは流れ模様を作ります。標本は、現在米国のイエローストーン国立公園で出来つつあるシンターです。(幅30cm)
産地:米国 イエローストーン国立公園


シンター

 シンターを作るバクテリアは、先カンブリア時代から地球上に住んでいました。標本は古生代のシンターで、オーストラリアで発見されました。(幅17cm)
産地:オーストラリア クイーンズランド州

坑内を照らす燈火

かわらけ燈

 江戸時代に使用されたもの。(幅8cm)
(佐渡金山(新潟県))


さざえ燈

 さざえ燈は、別子銅山で元禄年間から明治初年にかけて使用されていた。(幅10cm)
(別子銅山(愛媛県))


ドイツ式坑内燈

 ハルツ式を模したもの。明治23−35年。(幅15cm)
(佐渡金山(新潟県))


坑内燈

 明治時代に使用されたもの。(幅8cm)
(別子銅山(愛媛県))

鉱山技術書の始まり

De Re Metallika
デレメタリカ(1657年)

 鉱業だけでなく近代技術の集大成といわれるアグリコラ(1494-1555)の鉱山技術書です。アグリコラが働いていたドイツのエルツ山脈の街、ケムニッツでは、16-17世紀に鉱山業が盛んでした。ラテン語初版は1556年。続いて1561、1621年に出版され本書は1657年の最終4版です。


吹屋之図
ふきやのず(江戸前期)

 銅山の採鉱、選鉱、製錬の各工程を詳細に説明した木版彩色本です。住友家の鼓銅図録より年代の古いものと考えられます。20丁40頁の写本です。展示部分は、鉱石をから臼(うす)を踏んで砕き、篩(ふるい)で振るい分けているところを描いたものです。(江戸前期)


雲根誌(前後、三)
うんこんし

 明和年間(1773)に出版された木内石亭による博物誌。多種の鉱物が認識されています。


金銀銅鉛山見分秘伝書
乾坤
きんぎんどうなまりやまみわけひでんしょ
けんこん

 山相を見分ける(探査)の秘伝書の写本です。江戸時代後期山師の間で、一般に広く筆写され流布した内容のものです。
内田文書(江戸後期)


諸鉱山点検明細録
しょこうざんてんけんめいさいろく

 明治4年(1871)以降、工部省鉱山寮は鉱山技師長英人ゴッドフレー指導のもとに全国鉱産地を総点検しました。長谷川、小田島の担当した巡検結果を、内田慎吾が、同9年2月に筆写したものです。綿密な調査の結果をいち早く情報として入手筆写している熱心さに驚かされます。
内田文書(明治9年(1876))


金銀山敷岡稼方図
きんぎんさんしきおかかぜぎかたのず
(29cm×1950cm)

 江戸時代には種々の鉱山技術が発達し、明治以降の日本の近代化の基礎を作ったといえます。絵図は当時の技術を示す貴重な資料です。本図は佐渡金山の操業を描いたものです。展示部分は、坑内の作業の状況を描いたものです。


佐州金山図
さしゅうきんざんず
(27cm×1200cm)

 佐渡の産金は平安時代から知られていて、江戸時代には日本最大、世界でも有数の金銀山でした。展示部分は、坑外に運び出した鉱石を、処理、製錬する場面を示しています。


唐津石炭採掘之図
からつせきたんさいくつのず
(27cm×310cm)

 数少ない石炭絵巻で解説付きの貴重なものです。天明4(1784)年7月唐津の人木崎攸々軒(73才)の筆になるといわれます。
(天明4年(1784))


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