皆さんは養殖という言葉でどんなものを想像しますか?ハマチやタイのお刺身でしょうか?それとも海面に浮かぶ養殖用の筏( いかだ)でしょうか?人によっては赤潮や病気で死んでゆく魚、すなわちマイナスのイメージを思い浮かべるかもしれません。養殖は作り育てる漁業の中で、商品になるまで人間が管理する、いわば畜産の養鶏や養豚にあたる漁業の形態です。計画的に人間が必要な良質な食糧タンパクを生産・管理できるので、世界的にも大きく発展してきています。
 最近、陸上で薬などを使わずに安全に、高効率に、しかも海水など周りの環境を汚さない新しい養殖の方法が産まれてきました。写真にあるのは鹿児島県で行われているハマグリの陸上養殖と、三重県で行われているトラフグの陸上養殖(閉鎖循環ろ過式養殖)です。これらの他に九州でも山間の過疎地でヒラメの陸上養殖などが行われています。


 作り育てる漁業としてもう一つ重要なものが、小さな子供の時期の魚やエビ、すなわち種苗を放流し、そして自然の海で大きくなった後に漁獲する栽培漁業です。様々な原因で日本近海での漁獲量は減ってきていますが、日本では現在漁獲量が少なくて価格の高い魚種を中心に、約90種類の魚介類(ぎょかいるい)の種苗を、国や県の機関で生産し、そして栽培漁業に取り組んでいます。そのなかでもマダイやヒラメなど11種類では、年間に1,000万尾以上をも育てて、そして海に放しています。
 たくさんの魚やエビ、カニの種苗を作るためには餌がたくさん必要です。ごく小さな時期の魚などは動物プランクトンが餌として必要ですが、九州大学では県の機関などと共同で餌料プランクトン「ワムシ」の高密度大量培養に成功しました。この餌料プランクトンの培養方法は、日本のみならず世界中で注目され、そして使われ始めています。


作成者
協力
吉松隆夫 よしまつたかお (農学研究院動物資源科学部門)  
(株)シーアグジャパン,(株)関門海, 福岡県栽培漁業公社,近畿大学九州工学部