養殖魚は、狭い「いけす」で育てられるために、病原体に感染すると、その病気が広がりやすい環境に置かれています。現在、このような病気(魚病)によって毎年多くの養殖魚が失われています。抗生物質などの薬を餌に混ぜてあたえていますが、これらの薬が魚の体内に残留すると、その魚を食べる人にも薬が取り込まれてしまいますね。
人間は、インフルエンザ、結核、はしかなど、伝染しやすい病気を、予防接種(ワクチン)で防いでいます。これは体内に侵入してきた微生物に対抗する、免疫システムがワクチンで強力に働くようになるためです。海洋生命化学講座では、この原理を魚に応用して、薬を使わないで病気を予防し、健康な魚を育てる研究を進めています。また、特定の病原体にだけ効くワクチンだけでなく、いろいろな病原体に対する魚の抵抗力を上げるために、さまざまな免疫強化物質も開発しています。


作成者 中尾実樹 なかおみき (農学研究院生物機能科学部門)