樹冠部昆虫相の多様性


森林の樹冠部は、アクセスの難しさから昆虫相の調査があまり進んでいませんでした。最近、熱帯地域の調査が盛んに行われるようになり、樹冠部には予想以上に多くの昆虫類が生息していることが明らかになってきています。しかし、その大部分は未だ名前のつけられていない新種で、森林樹冠は深海とともに、地球上最後の未開拓地ともいわれています。


森林樹冠部のもっとも効率的な調査法として、フォギング法が知られています。この方法は殺虫剤を霧状にして樹冠に向けて噴霧し、落ちてきた昆虫を地上近くにセットしたネットで受け取る方法です。


ジャワ島西部の国立公園におけるフォギング法で採集された昆虫の個体数

(3地点,合計36平方メートル分の集計)


フォギング法で採集された昆虫(甲虫類)の標本

1平方メートルあたり約100頭の昆虫類が採集されました。個体数ではハチ類が最も多いが、種数では甲虫類が最も多いと思われます。





3地点間における甲虫相の比較

多くの甲虫は1地域に分布が限定されており、3地点に共通して分布するものは6%以下(円グラフの黄色部分)と、ほんのわずかでした。このことは、熱帯地域で多くの昆虫が極めて狭い地域に分布が限定されていることを示しているとともに、熱帯樹冠における昆虫相の多様性の高さをもあらわしています。



ポスター担当

小島 弘昭 (Hiroaki KOJIMA)(総合研究博物館・助手)


【会場マップに戻る】 【もどる】 【すすむ】