クリタマバチの生物的防除


クリタマバチとは


クリタマバチは、クリの新芽に虫こぶを作る、クリの大害虫です。虫こぶになった新芽はそれ以上伸長せず、花も咲きません。その結果、クリタマバチに加害されると、クリの収量は激減します。


写真1 クリの越冬芽に産卵中のクリタマバチ
写真2 クリタマバチの虫こぶ



わが国への侵入と防除の歴史


クリタマバチは、わが国へは1940年以前に、中国から持ち込んだクリの苗木または穂木に付いて、岡山県に始めて侵入したとされています。その後1960年代には、北海道にまで分布を広げました。クリタマバチの防除法として、日本に在来の土着寄生バチであるクリマモリオナガコバチを用いた生物的防除や抵抗性品種の育種などが試みられましたが、十分な効果はあげられませんでした。



土着のクリマモリオナガコバチと中国産のチュウゴクオナガコバチ


わが国にクリタマバチが侵入する以前から日本に分布していたクリマモリオナガコバチはクリタマバチに寄生しますが、産卵管が短いために、大きなクリタマバチの虫こぶ深くまでは産卵管が届きません。クリマモリオナガコバチは、もともと、コナラ属の植物に虫こぶを作るタマバチに寄生していたものが、中国から侵入してきたクリタマバチにも寄生するようになったと考えられています。土着のクリマモリオナガコバチに比べ、産卵管の長いチュウゴクオナガコバチは、クリタマバチの虫こぶの中心近くにいる寄主幼虫にも寄生することができます。


クリマモリオナガコバチ (左) とチュウゴクオナガコバチ (右) の比較(村上 陽三著「クリタマバチの天敵」より)


産卵管の長さ以外、形態的に区別するのは困難。チュウゴクオナガコバチは大きなクリタマバチの虫こぶにも産卵できるように適応していると思われます。



チュウゴクオナガコバチのわが国への導入


1979年と1981年に中国から輸入されたチュウゴクオナガコバチは、茨城県や熊本県を手始めに、日本全国のクリ栽培地域で放飼され定着しました。現在では、クリタマバチはチュウゴクオナガコバチにより低密度に保たれており、チュウゴクオナガコバチを用いたクリタマバチの生物的防除は大成功をおさめました。


写真3 クリタマバチの虫こぶに産卵中のチュウゴクオナガコバチ
写真4 クリタマバチの虫こぶの虫房内に産みつけられたチュウゴクオナガコバチの卵


茨城県つくば市におけるクリタマバチとチュウゴクオナガコバチの密度変化(守屋、一部未発表データ)



チュウゴクオナガコバチ導入後、その上昇に伴いクリタマバチの密度は減少しました。


ポスター担当

高木 正見 (Masami TAKAGI)(農学研究院 天敵昆虫学分野・教授)


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