私たちは、四季折々に咲くさまざまな形や色の花を見て、美しいと感じ、いやされます。
ですから、花の形や色には、改良にたずさわった人たちの美的感覚が反映されることになります。そのことを、東アジアを代表する花、ツバキをとおしてみてみましょう。

一重咲きと八重咲き

5枚の花びらで囲まれた花の中心に多数の雄しべと一本の雌しべをもつ「一重咲き」の姿が、基本的なツバキの花の形です。「八重咲き」は、雄しべが花びらに変化することによって、花びらの数が基本数よりも増えた状態です。しかも、その変化は単純ではなく、「獅子咲き」、「唐子咲き」、「牡丹咲き」、「千重咲き」など多彩です。



和洋の花形の差

おもしろいことに、外国で育成された品種では99%と圧倒的に八重咲きが多いのですが、日本で育成された品種では半数近くの45%が一重咲きです(萩屋、1995)。


変わり葉ツバキ

また、‘金魚葉ツバキ’など、葉の形にもこだわって育成された品種が日本にはあります。このような品種は外国ではみられません。


植物に求める美しさの形には、どうやら民族差があるようです。


パネル作成者: 比良松 道一(農学研究院植物資源科学部門)