ドジョウを守っていくために

 

 

 日本の水環境を代表する淡水魚類であるドジョウ類ですが、各種の生息状況は非常に危機的です。2012年に環境省が発表したレッドリストには23種・亜種が希少種として掲載されています。これは日本産ドジョウ類の約8割にあたります。なぜ、これほど多くの種が絶滅の危機に瀕しているのでしょうか?その理由はドジョウ類の多くが個性的で複雑な生活史生活史をもっていることにあります。

 例えばスジシマドジョウの仲間は普段は川や水路などに棲んでいますが、繁殖期には降雨などで増水してできた植物が豊富な浅い湿地に移動して産卵します。ダムができて水位が調節されると増水しにくくなりますし、川と水路の間に段差ができると移動ができなくなります。またコンクリートをつかって川岸を固めると、植物がなくなります。こうしたことが一つでも起こると、簡単に減少してしまうのです。

 現在ではいくつかの種について生息地の保全や飼育下での系統保存などの取り組みが行われています。しかし、いずれも十分ではありません。日本列島の個性的なドジョウたちを守っていくために、今後はより積極的な保全対策が必要です。

 

 

ドジョウの保全

 

 ドジョウ類の多くは各地で希少種となり、一部の種では絶滅が危惧される状況になっています。そのような中、少しずつですがドジョウ類の保全活動も各地で進展しつつあります。ここでは福岡県内での2つの事例を紹介します。

 

1. ドジョウが増えた湿地ビオトープ

 A市では陸地化した休耕田を掘削してビオトープ池の造成を行いました。ビオトープの造成を行った数ヶ月後には繁殖が確認され、その後は毎年増加しています。ここでは放流は一切行っておらず、良い環境ができたために、付近のため池等に生息していたものが移動してきて増えたものと考えられます。

 

 

2.ヤマトシマドジョウが増えた多自然川づくり

 多自然川づくりとは、従来の治水にあわせて景観や生物の生息場に配慮した川づくりを言います。県内A川において行われた多自然川づくりでは、コンクリート護岸を取り外して自然の景観を取り戻しました。その結果、ヤマトシマドジョウの個体数が増加したことが確認されています。

 

ドジョウの外来種問題

 

 人間が持ち込んだ外来種の多くは、生態系へ悪影響を与えることが近年明らかになっています。残念ながらドジョウにおいても外来種の問題がでてきています。

 日本国内で国外からの外来種として定着が確認されているのは、カラドジョウとヒメドジョウの2種です。このうちカラドジョウは九州でも福岡県、大分県、熊本県で定着が確認されています。いずれも朝鮮半島や中国大陸に分布する種で、食用に輸入されたドジョウに混ざって国内に持ち込まれ、放流されたことが原因と考えられています。

 またドジョウはこれまで東アジアのものは1種と考えられてきましたが、最近の研究では日本列島のものと中国大陸ものは遺伝的に大きく異なり、形態も異なることが明らかになっています。この「外国産ドジョウ」も各地で定着が確認されています。

 地域固有の貴重な生態系を守っていくためにも、買ってきたドジョウやよそから持ってきたドジョウは、決して野外に放流しないようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

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