■日本人の時代変化■

 日本人の顔つき、体つきは時代と共に大きく変化してきた。大陸・朝鮮半島に最も近い北部九州・山口地方人の特徴を過去へと追跡してみると、現代〜弥生時代については、一応連続的な時代推移が認められるものの、その前の縄文人と弥生人の間には、幾つかの重要な特徴において不自然とも言える激しい変化が起きていることが判明した。例えば顔面部を見ると、顔高が最も低い低・広顔の縄文人から、いきなり非常な高顔の弥生人へと急変するのである。他にも、歯のサイズや頭蓋の遺伝的な小変異の出現率、あるいは身長や体のプロポーンョンなどに、縄文人と弥生人の間には大きなギヤップのあることが明らかとなった。


 じつは長年の日本人の起源を巡る議論は、この両時代間の激しい形質変化をどのように説明するかを最大の争点としてきた。鈴木尚はそれを生活文化の変化に因る小進化と捉えたが、金関は、そこに朝鮮半島からの渡来人の影響を想定したのである。

身長の時代変化(平本、1981ほか)

 北部九州・山口地方に分布する渡来系弥生人は縄文人に較べてかなり高身長である。一方、同時期、西北九州や東日本には縄文人と同様、低身長の土着系弥生人が住んでいた。大陸・朝鮮半島にも高身長集団が広く分布していたことがわかっている。

北部九州・山口地方における人骨形質の時代変化(判別関数法:頭蓋8項目)

 横棒は各時代の人々の変異の幅を示す。
 弥生以降の人々の変異幅は重なりが多く、連続的に変化したことがうかがえる。しかし縄文と弥生の間には不連続とでも言うべき大きな違いが認められる。


主成分分析による顔面形態の比較(顔面8項目・男性)

 幅に比して高さの低い低・広顔の縄文人に較べると、北部九州・山口地方の弥生人(渡来系弥生人)は非常に面長で、しかも顔幅も相当広く顔面サイズが大きい。日本人の顔はその後、中世になるとやや低顔でそっ歯の人が多くなるが、近世から現代へと急速に細く面長な顔へと変化している。


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