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VI.炭酸塩鉱物(1)

59. 方解石
Calcite CaCO
3


(a) 方解石 Calcite
産地 秋田県不老倉鉱山/秋田県院内鉱山/栃木県足尾鉱山/埼玉県秩父鉱山/埼玉県椚平/新潟県間瀬/新潟県佐渡鉱山/岐阜県神岡鉱山/岐阜県赤坂/福岡県三の岳


(b) 鍾乳石 Stalactite
産地 岐阜県赤坂/大分県木浦鉱山/産地不明


(c) 玄能石 Calcite after gaylussite
産地 長野県殿戸

(a)方解石

方解石標本は40数点を数える.種々の晶癖のものが見られ,美晶も少なくない.

(i) r (10-11),f (02-21),h (03-31),φ (05-54)面等からなる菱面体を基本形とするものは,不老倉間瀬神岡椚平院内赤坂秩父産のものに見られる.

(ii) v (2131),r (53-82),y (32-51)面等を主とし,時にm (10-10)の柱面を有する犬歯状(犬牙状)または槍状と呼ばれるものは,足尾間瀬赤坂産の標本がある.

(iii) e (01-12)面にm (10-10)面を伴った扁平な菱面体,花弁状,葉片状をなすものは,足尾院内椚平産である.

(iv) その他,産地不明の標本に樽状のもの,佐渡鉱山産の百足石と呼ばれるものなどがある.
犬牙状の双晶は足尾間瀬産のものに,菱面体の接触または貫入双晶は間瀬,産地不明の標本に,花弁状の蝶状双晶は足尾産に見られる.


不老倉鉱山は淡桃色を帯びた径数cm,半透明の美しい結晶である.r 面を主とし,v w (31-45),n (41-53)面とλ (31-42),y a (11-20)の小面を伴い,彎曲しているように見える.
院内鉱山産はe およびm 面から成り,ときにv の小面を件つた扁平な結晶である.白色半透明で,径4cmに達する.
足尾鉱山の数個の標本は,黄銅鉱および母岩の表面に群集成長している.y 面が発達した無色透明の犬歯状結晶の集合体であり,f の小面を伴うものもある.y 面は(-1101)にそって彎曲し,(-1101)に平行な条線が見られる.大きさは径1cm前後のものが多い.e 面が発達した花弁状結晶の集合や,c (0001)面が顕著に発達した灰色半透明の板状結晶集合体で,小さいr面を伴っているものも認められる.結晶の厚さは1mm程度で,径は3cmに達する.足尾鉱山の方解石については砂川(1953)の研究がある.
椚平産は無色透明な{10-11}の劈開片で,大きさは7cm程度である.花弁状のものもある.
間瀬産は,v およびr を主面とする無色透明結晶が,(0001)を双晶面として貫入双晶をなしており,f 面を伴っている.
神岡鉱山産はw およびn を主面とし,r (10-11)面を伴った結晶の集合体である.w およびn 面はともに彎曲している.白色半透明で,径は1〜1.5cmのものが多い.

(b) 鍾乳石

木浦鉱山産鐘乳石は,淡褐灰色の犬牙状方解石が平行ないし放射状に集合して,表面が鋸の歯のよう
になった鐘乳石を形成している.長さは20数cmである.
赤坂産および木浦産の1標本は,表面が比較的滑らかな普通の鐘乳石で,20cm程度の長さを有す
る.赤坂産のものの方が表面は滑らかである.

(c)玄能石

殿戸玄能石は灰色ないし淡褐色の単斜錐体のような形であり,やや彎曲し凹凸のある8面からなっ
ている.長さ2〜5cmの単晶が放射状に5個集合して,双晶のような外観を有するが,内部は方解石の
粒状集合である.玄能石の原鉱物はゲーリュサックgaylussite(CaC03・Na2C03・5H20,単斜
晶系)といわれている.

60. 苦灰石
Dolomite CaMg(CO
3)2
産地 熊本県五木村
五木村苦灰石は幅5cmの脈状をなす.外側の1cmは淡緑色で,内側は白色を呈する.劈開の著しい粗粒の集合体で,晶洞中には径1mm以下のr (10-11)面よりなる無色透明の小結品が群生している.

61. 菱苦土石
Magnesite MgCO
3
産地 満州大石橋
大石橋菱苦土石は径数mmの劈開菱面体の集合であり,1cm程度の間隔で淡紅色の部分と灰色の部分が互層をなしている.{10-11}に完全な劈開があり,ガラス光沢を有する.

62. 菱鉄鉱
Siderite FeCO
3
産地 新潟県赤谷鉱山/栃木県足尾鉱山/島根県大森鉱山/大分県内ノ口鉱山
赤谷鉱山産菱鉄鉱は,赤鉄鉱の表面に,r (10-11)面よりなる径2mm前後の結晶が群生している.ガラス光沢,黄灰色ないし黄褐色を呈する.
足尾鉱山産は,褐色あるいは赤褐色透明,e (01-12)またはr (10-11)面を主とする1〜3mmの小結晶の集合体として,黄銅鉱の表面に群生する.6角樽状の結晶も認められる.
大森鉱山は晶相により2種に分たれる.1つは淡褐黄色,2〜3mmの菱面体の集合をなすもので,しばしばr (10-11)あるいはe 面よりなる結晶が見出される.他方はr の面からなる扁平な菱面体結晶の集まりで,花弁状を呈する.灰白色で結晶の大きさは1cmに達する.
内の口鉱山産はe 面よりなる結晶の集合体で,結晶面は彎曲し,ばらの蕾のような形をなす.淡褐色ないし暗褐色を呈する.

63. 菱マンガン鉱
Rhodochrosite MnCO
3
産地 北海道八雲鉱山/北海道然別/北海道稲倉石鉱山/秋田県尾去沢鉱山/石川県倉谷鉱山1


八雲鉱山産菱マンガン鉱は鐘乳状ないしぶどう状で,柱状に長く伸び,径は1cm以下,長さは15cmに達する.黒色物質を中心に同心状構造を有する.淡紅色半透明で,一般に光沢はにぶいが,部分的にはガラス光沢を有する.
然別産はr (10-11)面よりなる1cm以下の結晶の集合体で,淡紅色を呈する.
稲倉石鉱山産は鮮かな紅色を呈し,e (01-12)またはr (10-11)面よりなる結晶の集合体である.結晶の径は数cmに達するものもある.
尾去沢鉱山産は黄鉄鉱および重晶石の表面に,紅色ないし淡紅色半透明で,r面よりなる数mm以下の美結晶が群生している.
倉谷鉱山は,e 面よりなる扁平な結晶が彎曲して半球状に集合したもので,ばらの蕾のような集合体をなしている.各個体の径は5mm前後であり,淡紅色半透明である.閃亜鉛鉱,水晶,黄銅鉱と共出している.

64. 菱亜鉛鉱
Smithsonite ZnCO
3
産地 岐阜県神岡鉱山
神岡鉱山菱亜鉛鉱は皮殻状の雅趣ある集合体をなす.表面は腎臓状を呈し,ガラス光沢があり赤褐色ないし紫青色である.本鉱山の菱亜鉛鉱については篠本(1896)の報告がある.

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