急性および慢性肝不全治療用人工肝臓の開発


急性肝不全治療用人工肝臓(多細管PUF/肝細胞スフェロイド充填層型人工肝臓)

 円筒形のポリウレタン発泡体(PUF)ブロックに液流動用の細管を多数設け,細管間のPUF孔内に大量の肝細胞スフェロイドを形成させる人工肝臓モジュール。本モジュールは,2週間程度の良好な機能維持が達成でき,急性肝不全患者治療用として期待できる。既にヒト臨床用モジュール開発は完了した。


 

慢性肝不全治療用人工肝臓(肝小葉類似構造型人工肝臓)

 毛細血管に見立てた中空糸を微小間隔で規則的に配置し,遠心力を利用して中空糸外部空間にロータスルート(レンコン)状オルガノイドを形成させる肝小葉類似構造型人工肝臓モジュール。本モジュールは,数ヶ月の機能維持を達成できることから,急性および慢性肝不全治療用の新規人工肝臓として期待される。現在,ヒト臨床用へのスケールアップを進めている。



前臨床試験とヒト適用に向けた準備

 重篤な肝不全ブタを用いて急性肝不全治療用人工肝臓の前臨床試験を実施した。その結果,血中アンモニアの上昇抑制(正常域に維持),血糖値の維持,乳酸値の上昇抑制,腎機能や血圧の改善,延命等の効果が得られ,本人工肝臓が肝機能補助ばかりでなく,全身状態の改善にも良好な治療効果を示すことが示された。ヒト臨床用の装置開発はほぼ完了し,現在,九州大学医学部倫理委員会に臨床応用の申請を行っている。

 一方,慢性肝不全治療用人工肝臓は基本設計が完了したことから,現在,ヒト臨床用へのスケールアップおよび動物実験による性能評価へと研究を進めている。



研究課題:ヒト臨床応用を目指した高機能性ハイブリッド型人工肝臓の開発
研究組織:工学部・医学部
審査部門:生命科学  採択年度:H9-H10  種目:B  代表者:船津 和守(工学研究院 化学工学部門 教授)