■身長・遺伝■

 広く東アジアを舞台とする遺伝学的な研究からも「日本人の起源」に関して貴重な情報が寄せられた。この図は初期の研究成果の一つで、湿った耳垢を持つ人と乾いた耳垢を持つ人(この特徴は遺伝する)の比率を調べたもの。日本列島の南北端に位置するアイヌと沖縄の人々は比較的湿型が多いのに対して、本州域は乾型が多く、その特徴は朝鮮半島や大陸につながっている。


 こうした結果から、「日本列島には元々アイヌや沖縄人に似た人々が住んでいたが、おそらく弥生時代に大陸・朝鮮半島から別集団が流入したため本州域では変化したが、その影響の及ばなかった日本の両端に古い特徴が残った」、とするモデルか提唱された。金関の渡来説が改めて注目されるようになった背景には、この様な現代人を対象とした最新の遺伝学的研究も大きく寄与した。

乾型湿型湿型耳垢の頻度にみる地域差

(足立、1981より)

歯のサイズ

 歯の大きさは、時代と共に小さくなることが世界各地の集団で確認されている。しかし、日本では、古代人の歯としては最小の縄文人から最大の弥生人へと逆に変化する。

縄文人と弥生人 ―歯のサイズ(ブレイス・永井、1982)

渡来系弥生人と縄文人の横顔

渡来系弥生人と縄文人の顔を耳眼水平面
(眼窩下縁を通る面)を基準にして比較した場合

頭骨の形態小変異22項目に基づく東アジア、北アメリカ、オセアニア集団の類縁関係

頭骨の主な形態小変異

1.ラムダ小骨2.アステリオン骨3.後頭乳突縫合骨4.顆管開存5.舌下神経管二分6.横後頭縫合痕跡7.眼窩上孔8.前頭縫合9.横頬骨縫合痕跡10.頭頂切痕骨11.内側口蓋管12.鼓室骨裂開13.前顆結節


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