メニューに戻る

総合研究博物館ホームページへ

前頁/後頁

VII.珪酸塩鉱物(1)

72. 正長石および微斜長石
Orthoclase and microcline KAlSi
3O8
産地 福島県高玉鉱山/福島県石川山/山梨県金峰山/長野県茂木山/岐阜県苗木/福岡県福吉/鹿児島県屋久島(カールスバッド双晶)/朝鮮金剛山/滋賀県田の上山(マネバッハ双晶)

正長石と微斜長石とは外観で区別することはできない.一括してカリ長石と呼ぶのも一方法であるが,ここでは高標本における従来の呼び方に従い,正長石として記載した.標本数は70個の多くを数え,高標本におけるもっとも標本個数の多い鉱物の一つである.結晶はほとんどすべてがペグマタイト中に産する巨晶であり,径4〜5cmのものが普通で,最大径20cmのものもある.色は一般に白色ないし淡黄色を呈し,肉紅色あるいは淡緑色のものは少ない.なお,単結晶よりも,連晶や双晶をなす場合が多い.単結晶の晶相は次の3つの型にまとめられる.


(1) c (001),b (010),m (110),x (-101)面が良く発達し,これに,y (-201)の小面を伴う柱状結晶で,比較的簡単な面構成が特徴である.
石川山産,苗木産,および田の上山産の正長石はこの型の代表的な標本で,長柱状をなす.また田の上山産には c b m x y 面に加えて細いo (111)面を有し,このうちc x 面が良く発達した短柱状を呈するものもある.


(2) c b m の3面が良く発達して柱状をなす点は(1)型と同じであるが,これにy x o n (021),z (130)の諸面が加わり,やや複雑な面構成となる.産地不明標本が典型的な標本で長柱状をなしており,n およびz 面が大きく発達するのに比しy o の面は小さい.
金峰山産もこの型に属する長柱状結晶で,n およびx 面を欠いているが,y 面が良く発達しo z の細い面を伴う.とくに(001)の劈開が著しい.
田の上山産はn 面を欠いており,またc 面の顕著な発達で短柱状をなすが,o x 面も比較的良く発達している.n 面を欠くが長柱状をなしており,z y x o 面がかなり良く発達するものも認められる.
苗木産は水晶と共出する柱状結晶で,径1.5cm,高さ2.5cmの小結晶が群生する.これは淡緑色を呈する美晶で,天河石amazoniteと称されるものである.


(3) m とx 面で特徴づけられる氷長石adularia型の晶相であって,高玉鉱山産はこの型に属する.同標本は7mm程度の淡褐色の小結晶が群生しており,b (010)の細い面を伴っている.ときに緑色ないし白色半透明の小結晶で,同様の晶相を有する.


次に双晶をなすものについてみると,(100)を双晶面とするカールスバッド双晶,(001)を双晶面とするマネバッハ双晶,(021)を双晶面とするバベノ双晶,およびまれにこれらの連合双晶が認められる.

(1) カールスバッド双晶
苗木産は水晶を伴って1cm程度の小結晶が群生するが,これらはc m x b 面から成るカールスバッド双晶をなし,一見単結晶の様な形態を示す.
屋久島は風化により結晶面は平滑さを欠くが,c b y m 面から成る典型的なカールスバッド双晶で,b 面の発達が良く,扁平な形を呈する.
田の上山産はb c m 面にくわえ,x y o z の小面が伴い,複雑な面構成の双晶である.花崗岩の斑晶をなす径2cm,長さ2.5cmの桃色の小結晶で,c b m y o z 面から成る双晶であるものが含まれる.

(2) マネバッハ双晶
この型の標本は少ないが,田の上山がマネバッハ双晶の代表である.4軸方向に伸びた4角柱状をなし,b c 面のほかにx m o z y の諸面が認められる.

(3) バベノ双晶
この型の双晶は,(2)型同様に4軸方向に長柱状をなすのが特徴であり,その断面もほぼ4角形に近い.標本は多数にのぼるが,いずれも端部しか認められない.
茂木山産は径1.5cmの小結晶ではあるが,b c m y x 面から成り,苗木産はb c m x 面から成る比較的簡単な面構成のバベノ双晶である.
田の上山産および金峰山産は,b c m o x y z 面を有する複雑な面構成の双晶である.なお,z 面はいずれか一方の個体にしか認められない.
また,苗木産にはそれぞれマネバッハ一バベノ式連晶,バベノ4連晶をなしており,いずれもa 軸に伸びた柱状をなし,径2〜3cmの4角な断面を持つ標本が認められる.前者ではc b m o x y z 面,後者ではc n m o x y の諸面が認められる.
福吉産は石英とともに文象構造をなすものである.

73. 曹長石
Albite NaAlSi
3O8
産地 岐阜県苗木/福岡県大分村


苗木産曹長石は,カリ長石の結晶面をおおって,白雲母と共生する白色微晶が群生している.
大分村については,岡本(1944)による記載があり,緑色片岩の空隙に産する径2〜3mmの乳白色の小結晶である.

74. 曹灰長石
Labradolite NaCaAl
3Si5O16
産地不明
曹灰長石標本は産地不明であるが,暗色の塊状結晶で,劈開が発達し,研磨面では青色ないし緑色の美しい閃光を発する.

75. 灰長石
Anorthite CaAl
2Si2O8
産地 東京都三宅島
三宅島灰長石は,b (010),c (001),y (-201)の3面が良く発達し,a 軸方向に伸びており,n (0-21),e (021),m (110),M (1-10),p (-111),o (-111)の小面を伴っている.淡褐色,径1cm,長さ2cmで,b c y 面はガラス光沢を有する.

76. 普通輝石
Augite (Ca, Na)(Mg, Fe2+, Fe3+, Al)(Si, Al)
2O6
産地 新潟県米山/山梨県八ヶ岳/山梨県上佐野/佐賀県西ヶ岳
普通輝石標本は,いずれも安山岩等の火山岩中に斑晶として含まれるもので,長さ6〜15mmの暗緑色柱状結晶である.
米山産は短柱状をなし,c (001),a (100),m (110),b (010),s (-111)面が認められる.
八ケ岳産は長柱状をなし,a b m s 面が発達するが,a 面は小さく,また,(100)面で双晶をなすものも見出される.
上佐野産はa b m s 面が大きく発達し,u (111),z (021)の小面を伴う長柱状結晶である.
西ケ岳a b m s 面の発達する長柱状結晶で,まれにu 面を伴う.

77. 透輝石
Diopside CaMgSi
2O6
産地 朝鮮砲手鉱山
砲手鉱山透輝石は,ドロマイト岩に伴って産する淡緑色柱状結晶で,表面に金雲母が付着する場合もある.同産透輝石の形態については木野崎(1932)による記載がある.すなわち,a (100),b (010),m (110)の柱面が良く発達し,u (111)面とs (-111)面を伴っており,また,c (001)の微小面も認められる.径6cm,長さ15cmの大結晶で,a b m u s 面のほかにp (-101),o (-221)面が認められる標本を含む.

78. 灰鉄輝石
Hedenbergite Ca(Mg, Fe)Si
2O6
産地 岩手県釜石鉱山/島根県笹ヶ谷鉱山/大分県尾平鉱山/産地不明
釜石鉱山産灰鉄輝石は,磁鉄鉱からなる鉱石の割れ目に成長した,濃緑色の針状結晶である.
笹ケ谷鉱山産は緑色柱状で,放射状集合体をなし,柱状晶の長さは7〜8cmに達する.
尾平鉱山産は暗褐色の単結晶で,a (100),b (010),c (001),m (110),o (-221),p (-101)面から成るが,a面が特に大きく発達して板状をなす.板径4cm,厚さ1.5cmの大結晶である.

79. ヨハンゼナイト
Johannsenite CaMnSi
2O6
産地 岡山県寺河内
寺河内ヨハンゼナイトは,ばら輝石と共出する.灰青色の長さ8cmに達する柱状をなし,灰鉄輝石に類似した放射状集合体を形成している.桃井(1964)により化学分析が行なわれ,ヨハンゼナイトと決定された.

80. 古銅輝石
Bronzite (Fe, Mg)
2Si2O6
産地 東京都父島
父島古銅輝石は径3cm程度の短柱状をなし,暗褐色を呈する.劈開が良く発達し,劈開面は亜金属光沢を有する.

メニューに戻る

総合研究博物館ホームページへ

前頁/後頁